院長による肝臓疾患の講演資料です。
 

肝臓病は原因が主にウイルス、自己免疫性、全身疾患に伴うものや飲酒を含めた生活習慣が関与しますが、無症状の場合が多く注意が必要です。積極的に検査を受けられることをお勧めします。ここで主に慢性肝疾患についてのお話を致します。



 

肝臓は予備能力が高くいため、一般に日常では全体20%程度しか使われていないため, 慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いことから「沈黙の臓器」と呼ばれています。このことを正しく認識し、症状がなくても検査をして病気の早期発見が望ましいです。



 

肝臓に炎症が生じると’肝炎’と称されます。
種々の原因が見られます。問診や血液検査、腹部超音波検査などが診断の手段となります。



 

肝臓疾患に関連した、血液検査項目とその意義です。



 

脂肪肝です。一概に飲酒および肥満だけでなく、その病態により分類がなされています。



 

最近の疾患概念で非アルコール性脂肪性肝炎とは、文字通り、飲酒をしない方の脂肪肝です。慢性肝炎から肝硬変になり肝がんを合併する場合もあります。つまり飲酒をしない方でも、潜んだ肝臓病がありますので健康診断で指摘がある方は注意が必要です。



 

一般的に脂肪肝の方は増加傾向にあります。しかしながら肥満者の頻度は変化がなく、他の要因の関与が伺えます。



 

肝臓がんの死亡率は増加傾向にあります。



 

臓器別がんの死亡頻度は男性で第三位、女性で第四位です。



 

肝臓がんの原因は86%がウイルスで、C型肝炎ウイルスが70%でB型肝炎ウイルスが16%程とされています。
健康診断でご指摘された方は精密検査や経過観察が必要です。



 

ウイルス性肝炎のキャリアー(持続感染者)の頻度はB型肝炎ウイルスが約140万人で、C型肝炎ウイルスが約200万人とされています。



 

慢性肝炎の進行度は肝生検の組織診断によってなされます。



 

ウイルス性肝炎の肝障害の機序は、肝炎ウィルス自身に直接的な肝細胞障害性はなく, 免疫学的な機序が関与しています。



 

各B型肝炎ウイルスマーカーには意義があります、キャリアーの方は血液検査でご自身の状況を把握しておきましょう。



 

ほとんどのB型肝炎のキャリアーの方が、無症候性に経過します。一部の人が肝炎を発症し肝硬変や肝臓がんになります。



 

また血液学的にウイルスが沈静化するセロコンバージョンが起こってもその後に肝機能の再増悪する場合がありますので注意が必要です。



 

急性B型肝炎におけるウイルス増殖とトランスアミナーゼと血清肝炎マーカーの推移を表します。
基本的に成人で感染したB型肝炎は一過性の病態で治ります。

ただし最近の知見としてジェノタイプAのB型肝炎ウイルスは慢性化しやすいとされています。



 

B型肝炎キャリア(持続感染)の発がん年間進展率を表します。

大事なのは、非代償性肝硬変(肝硬変が進行して治らない状態)ばかりでなく、非活動性のキャリアーも含め、色々な状態でも肝臓がんが合併するということです。



 

C型肝炎ウイルスの自然経過は、慢性肝炎から肝硬変になった場合に肝臓がんのリスクが生じます。



 

ウイルス性肝炎に対しての種々の抗ウイルス療法を示します。



 

厚生労働省のB型慢性肝炎の治療ガイドラインです。B型肝炎の治療は核酸アナログと言われる抗ウイルス薬が中心となり治療成績が向上しています。(2012年の案が公表されています。)



 

C型肝炎ウイルスの治療の中心である、インターフェロンは肝細胞のレセプターを介して肝炎ウイルスのメッセンジャーRNAを分解します。



 

最近のインターフェロンは1週間に1回投与が可能なペグインターフェロンが主流です。



 

リバビリン(内服薬)とペグインターフェロンを併用すると、より効果がアップして、従来インターフェロン単独療法でも難治であった高ウイルス量の患者でも治療効果は向上しました。



 

リバビリン併用ペグインターフェロン療法は、初回治療無効症例でも約85%に効果を認めました。



 

2011年に改定されたC型慢性肝炎治療ガイドラインを示します。
(2012年の案が公表されています。)



 

医療従事者に限らず、ペアの相手がB型肝炎ウイルスで感染した場合は図のような防御策が必要です。



 

B型肝炎ウイルスの感染力は強く、その消毒の要点は図示のごとくです。



 

国の予防対策としてB型肝炎キャリアーの感染の成立は、殆どが母子感染とされていますので母親がキャリアーの場合は出産直後にB型肝炎ウイルスの感染予防策が施され、ほぼ母子感染は無くなりました。



 

インターフェロン療法は高額医療になります。
このためB型肝炎およびC型肝炎のインターフェロン治療に対しては医療費助成がございます。
実際の治療は東京の場合は都が認定した施設のみです。
当院も東京都肝臓専門医療機関です。



 

ウイルス性肝炎に対する社会的な動向を提示致します。
ウイルス性肝炎の場合、検査・治療の進歩に伴い専門医でないと適切な診断治療が不十分になる場合があります。
特に無症状な場合が多いので定期的な検査や専門医のコンサルトが必要です。



 

自己免疫性肝炎は、中年の女性に多く、本人または家族に自己免疫性疾患があり、他の肝炎の原因がない場合に疑う。

また検査事項の特徴があります。肝臓がんの発生頻度は10年でほぼ7%です(厚労省データより)。ステロイド治療が第一ですが継続的な治療が必要です。



 

実際の症例です。毎回人間ドックでは軽度の肝機能障害を認めます。
精査の結果、自己免疫性肝炎と診断されました。肝疾患は自覚症状が少なく定期的な健康診断の受診が重要です。またわずかでも異常を認めた場合は早めに精密検査をお勧めします。



 

 

原発性胆汁性肝硬変は、中高年の女性に多く、本人または家族に自己免疫性疾患があり、他の肝炎の原因がない場合に疑います。ここまでは自己免疫性肝炎にも見られますが、検査事項の特徴に違いがあります。
また門脈圧亢進症が肝硬変に進展するよりも早く顕在化することがあり食道静脈瘤に注意する必要があります。



 

薬剤性肝障害も重要な原因です。
病型による分類では肝細胞障害型、胆汁うっ滞型、混合型があります。常備薬がある方は定期的に血液検査をお勧めします。
漢方薬やサプリメントでも生じる場合があります。



 v

最後に肝臓病の早期発見、早期治療のポイントは、疾患を確実に拾い上げること。

検査結果の正確な把握のために早めに肝臓専門医を受診する。

必要な精密検査や治療を理解した上で受ける。
また軽度の肝機能障害のみで済まさない。
一度の検査で原因が究明できなくても、その後に病態が判明する場合があり経過観察を怠らない。
生活習慣病との関連があり普段より十分に注意をする。
以上のよう事項が重要だと思います。



 

二子玉川メディカルクリニック